宙に浮いたエアコン

プロローグ いいよ、いいよと大家は言った

引っ越しの3週間ほど前、マンションの玄関で大家とばったり遭遇して、こんな話をした。

「あっ、そうだ、大家さん。シャワートイレを自分でつけたんですけど、あれ、どうしますかね。取り外しちゃった方がいいですか?」

「いや、そのままでいいですよ。面倒でしょ。ほかにもなにかあれば置いていけばいいよ」

「ありがとうございます。助かります。それとエアコンはどうしましょ? まあ、けっこう古いですけど、去年の夏までは問題なく動いてました。ただ、排水ホースは相当ボロくなってるんで、交換しないとだめでしょうけど」

「ああ、それもいいですよ。撤去するにもお金がかかるんでしょ?」

「ええ、そうなんですよね」

「いい、いい。そのままでいいから」

引っ越し日、さらに1日置いて掃除をしに行った日と、大家に挨拶をしようと何度か訪れるが、用があったのか両日とも会えずに、そのままになっていた。

そして10日ほど前、原状回復について見積もりを出すからよろしくねと、不動産屋からの電話。指摘されたのはトイレに設置したタオルハンガーの跡と、フローリングについたタバコの焦げ跡。

タオルハンガーの跡は壁紙の部分だからどうせ取り替えだろう、つまり減価償却じゃないのと意見を言っておいた。

タバコの焦げ跡については、掃除をしたときに見たけど、ベッドの下であり、自分に記憶がなかったのだけれど、反証する証拠写真もなく、これは受け入れるしかないかなと思った。

見積もりの項目にビックリ!

もろもろで5万円ぐらいは敷金から引かれるかななどと想像していたところ、昨日になって原状回復にかかる見積もりが出てきた。その中のひとつの項目を見てビックリ。

エ、エアコン撤去費用? はぁ?

さっそく不動産屋に電話。大家が了解していたことだから確認して欲しいと告げる。

そして、今日になって再び不動産屋から電話があり、やっぱり払って欲しいと言う。

「大家さんは確かにそういう話をしたというのは覚えていました。だけど、エアコンを見てみたら相当古いのでやっぱり撤去して欲しいということで……」

「その費用をこちらに持てと?」

「ええ、そういうことですね」

「いやいや、それなら最初から持って行ってくれというべきでしょ。引っ越す前なら無料で引き取ってくれるという人がいたんですよ。それを大家さんが配慮してくれて、お金もかかるだろうから、置いていっていいよと言ったから、そのままにして出たわけでしょ。それを今になってやっぱり古かったから撤去したい。ついてはその費用を持てというのは、ずいぶんおかしな話じゃないですか?」

「うーん、でもねえ、エアコンを撤去することは決まっているわけで」

「それはそっち側の話でしょ? 撤去するしないは。撤去して欲しかったのなら、引っ越す前に言うべきです。それならもっと安く、あるいは無料で手配できたんですから。その機会を奪ったのはそちら側ですよ」

「はあ、ではもう少し調整して……」

「大家さんと直接話したいですね」

「はあ、それも考えますが、ひとまず預けていただいて、もう一度大家さんに話してみます」

「じゃあ、よろしくお願いします。ちゃんと話を伝えてくださいね」←今ココ

朝から徒労感たっぷりの電話を受けて、ガックリきている。
こうなるとお金の問題というよりも、人としてどうなのかと思ってしまう。いや、もちろんこの件で一円だって払いたくないですけどね。

さて、このエアコンは誰が撤去すべきで、誰がその費用を払うべきなのだろうか? エライ人、教えて。

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