山手線に乗っていた。駅に着いたので、見ていたiPhoneをコートのポケットにしまい、歩き出そうとしたところ、iPhoneはポケットに収まってくれず、宙に浮いた。
クルッと回転するiPhoneをつかもうと、もがく手。しかし、iPhoneはむなしくそれをすり抜け、電車とホームの間にスルリと消えた。
こんなキレイな落ち方があるのか、見惚れてしまうほど、美しくゆっくりと落ちるべくして線路際に落ちていった赤いケースのiPhone。
さて、困った。ホームに降りて、あたりを見回してみたが、駅員の姿は見えない。代わりにコトの一部始終を見ていた電車内外にいた人たちが、興味深げに電車とホームのスキマから下を見る。
mojoも一緒になって覗く。あった、ありましたよ、iPhone! 下を向いているので液晶の損傷はわからないが、とりあえずは無事に、かつ線路にかからない場所に落ちていた。
目の前に若い女性がいた。彼女も様子を心配そうに見ている。わかっているだろうに、ジェスチャーで落としちゃったんです、と説明をするmojo。彼女もしていたイヤフォンを外し、うんうんと頷いた。そして、下に落ちたmojoのiPhoneを改めて覗き、大丈夫そうですよ、とでもいうように笑ってくれた。
さて、駅員を探さなきゃ。ホームの階段を降りた。キオスクのおばちゃんに聞くと、改札のところにオフィスがあるからと親切に教えてくれた。
オフィスに行くと、忙しそうだったが、すぐに手続きをしてくれ、連絡をしたので落としたあたりで待っていてくれ、とのこと。そして、iPhoneの際をギリギリで通過していく電車を何台も見送り、やきもきしながら待つこと10分ほど、例のマジックハンド的な道具を携えた駅員2人がやってきた。
「忙しいところ、すみません」
とmojo。このあたりです、と指差すと電車が行ったタイミングで下を覗き込む駅員。モノを確認したらしく、mojoに目で合図すると、さっそくマジックハンドを下ろす。すると、苦労することもなく、あっという間に引き上げた。手慣れているというか、なんというか。
改めて感謝を述べて、2人の駅員を見送る。手にしたiPhoneを確認してみると、液晶のヒビぐらいは覚悟していたのに、ほぼ無傷のまま戻ってきた。
思えば、駅でこういう世話になるのは初体験。忙しい時期なのに、どのセクションでも笑顔で対応してくれ助かった。
そして、日々ちょっとした段差で躓いたり、ものを落としたり、風呂の栓をしないでお湯を溜めようとしたり、小さなミスをいくつもするようになったのは、歳を取ったということなんだろうなんてことを、戻ってきたiPhoneについたホコリを払いながら考えた。
来年はシルバーの入口なので、こんなことがさらに増えていくのか。それに抵抗するのか、抵抗できる術はあるのか、どれが正解なのかわからないが、そろそろ新たなステップに入るということなんだろう。
とりあえず、恥ずかしい年末の顛末を記しておく。西へ向かう新幹線を待ちながら。
コメント
iPhoneを落としたことは何回もあります。ホームではありませんが。
今使っているiPhoneに貼ってあるガラスフィルムにはヒビが入ったままです。
風呂の栓をしないまま沸かそうとして、ブブーと鳴らすことはしょっちゅうです。
来年もよろしくお願いします。
△Junさん
自分だけではないと思うと安心しますねえ。こちらこそ来年もよろしくお願いします。