りんごジャム

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手作りのりんごジャムをもらった。ビンのふたを開けると、ふわぁっと甘酸っぱい、いい匂いがした。

作ってくれたのは、とある年上の女性。今はおだやかな顔をしているが、ときに目の前にいるのにいないような、どこか深いところにいってしまったような顔をすることがある。

長崎で生まれた。父の仕事の関係で広島へ行き、天気のよい夏の暑い日に、きのこの形をした雲を見た。

その雲の下では彼女の父が働いていた。だけど、偶然その日は電車が動かず、たどり着く前に引き返してきた。でも、知り合いの安否を求め、その日のうちに中心地へ向かった。

それからしばらくは、この世のものとは思えない光景のなかにいた。道端に—といっても道にもなっていないけれど—立っていると、親子が水を求めてやってきた。

彼女は少し離れた場所までいって水をくみ、それを親子にあげた。二人はおいしそうにそれを飲んで、飲み干したと思ったら、そのまま息をしなくなってしまった。

最後に「ありがとう」と言って、目の前で消えていく親子。

「いっぱいあったの」と彼女は言った。当時、小学校にあがるかあがらないかの年齢で、抱えきれないほどの「重いもの」を持たされて、それがどんなだったのか、2013年のmojoには想像できない。
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「戦争はね、しちゃいけないのよ……」
りんごジャムを差し出しながら、彼女はmojoに言うとでもなく、ポツリと言った。

「いろいろあったから、私少しおかしくなっちゃったの」

もらったりんごジャムのカケラを歯で押しつぶしながら、以前彼女が言っていた言葉を思い出した。

今は孫もあり、平穏そうな日々を送っているように見えるが、りんごジャムをつくりながらも、ときどきストンと世界が落ちていくなんてことがあるのかな、と思う。

おいしいですよ、りんごジャム。

コメント

  1. なおみ より:

    なんだか涙出てくる・・・

  2. KHOO より:

    タイトルでApple関係の記事かと思って読んだら…
    何も言えないです。

  3. mojo より:

    △なおみさん
    いろんなものを抱えたり、乗り越えてきた昔の人は強いです。平気な顔をしているけど、すごいんだなと思うことがあります。

  4. mojo より:

    △KHOOさん
    でも、Apple製のりんごジャムが出たら、買ってしまいそうですね。

    今朝食べたぶんで、今回もらったジャムは終わってしまいましたけど、おいしくいだだきました。

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