車椅子を押してみてわかったこと

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バスで行くか電車を使うか?

先日、父ちゃんの車椅子が到着してから初めての遠出をした。近所の公園などには行ってみたものの、まだ時間のかかるところには行ったことがなかった。

まず悩んだのが、どのルートで行くかということ。バスに10分弱乗り、急行の電車に乗り換えてもう10分というコースが、目的地まで行くのにもともと使っていたルートだ。

しかし、なかなか図々しくなれないというか、バスを停め運転手さんに車椅子用のステップをセットしてもらい、車内でも器具を使って固定してもらうという作業を頼みにくい。乗客が多い時間帯ならなおさら。

そんなわけで今回は最寄り駅から電車を乗り継いで目的地まで行ってみることにした。

難所の連続に疲れ果て

最寄り駅はエレベーターを使いなんなくクリア。

ところが第一の乗り換え駅でエレベーターに乗りホームのある階に行くと、そこからは乗り換えができずホームの「反対側のエレベーター」で一階に降り、いったん改札を出て入り直さなければ車椅子での乗り換えができないのだと言う。

もちろん歩くことができれば、階段かエスカレーターで簡単に乗り換えができる。エレベーターが乗り換え口についていないのだ。

これには参った。ホームの端から端まで移動して、エレベーター→改札→エレベーター→改札と通って、やっと目的のホームに出た。

50人が目の前を通り過ぎて行く

しかし何度も通過した改札で、考えられない状況を体験させられた。

自動改札は10台あっても車椅子が通ることのできるのは一、二ヶ所しかない。駅員が配置されているところなら、アナログな改札を通ることができるが、自動改札しかない駅も多くある。

そのような駅では一、二ヶ所の改札を通らなければならないのだが、ある駅でその改札を電車から降りてくる乗客たちがあけてくれないということがあったのだ。

隣もその隣も改札もあいてるのに、一番近いからと問題の自動改札を通って行く人たち。

こちらはあきらかに車椅子で通ろうとして待っているのに誰も止まってくれない。

10人、20人、30人……誰も気にもとめないで改札を通過していくのを見送りながら、あ然とした。結局50人ほど通り過ぎたところで、やっと60代とおぼしきおじさんがこちらに気づき通してくれたのだが、あまりにも通れないので駅員を呼びに行こうか迷ったほどだ。

こんなことがあるんだなあ。

そういえば父ちゃんがまだヨロヨロしながらも歩けていた時、電車やバスで席を譲ってくれないケースもかなり体験した。なんだか哀しくなる。

車椅子に優しくない電車

さらに難しかったのは車椅子で電車に乗り込むこと。電車によってはホームと車体がかなり離れていることがあるし、車椅子初心者にとっては、ほんの少し隙間や段差があるだけでもグラグラしてしまうし、すぐに不安定になり、危なっかしい。

この段差については駅の中だけでも相当あるが、外に出るとさらにたくさんの段差や障害物が待ちかまえている。

こういうことは、知識としては知っているつもりだったし、想像もできているつもりだった。しかし、実際に自分が車椅子を使う立場になり、その認識も想像もまるで足りないことがわかった。

意外だったのはホームや通路、路上にある盲人用の識別マークが車椅子にとってはガタガタしてハンドルをとられやすいということ。

特にホームにあるものは電車に近く避けることもできないので、ハンドル操作が難しかった。もちろん、これを取り除けと言っているのではない。ただ車椅子初心者には難しかったということだけだ。

タクシーのトランクに車椅子は入るの?

このように慣れていないこともあり、時間も予定よりずいぶんかかったし、目的地に着いた時には、もうヘトヘト。

そこで帰りはタクシーを使ってみることにした。実は前日にタクシーも試してみようと話し合っていたのだ。

停めたタクシーの運転手さんは、とてもいい人だった。
「車椅子入りますか?」
と聞くと、
「大丈夫ですよ」
と言ってテキパキと車椅子をたたんでトランクに入れてくれた。

こちらが説明書をよく読んでいなかったせいで知らなかったのだが、ただ折りたたんだだけではトランクに入らないのだとか。

確かこのフックを押せば……と、運転手さんが車椅子の後ろについているフックを押すと押し手が折れ曲がり、さらにコンパクトになった。これで車椅子はきれいにトランクの中に収まってくれた。

運転手さんによれば、クラウンなど昔ながらのセダンのタクシーならたいていは大丈夫だが、最近は車椅子が入らないタクシーもあるとか。

車椅子持参の場合には、停めるタクシーも選ばないといけないな。と思ったら、こんなニュースを目にした。これからはこういうタクシーが増えていくのかな。助かるね。

タクシー、ミニバン化…高齢化・外国人に対応 (読売新聞) – Yahoo!ニュース

考え方を変えなければ街は変わらない

しかし、今回の遠出はいろんな勉強になった。自分が使う側になって初めて言うようでは情けないが、日本はもっと障害者や高齢者に優しい国にならなければいけない。

特にこれから超高齢化社会を迎えるにあたって、今のままでは多くの人が困ってしまう。

障害を持っていても、高齢で動けなくなっても、安心して「気楽に」出かけられる世の中であって欲しい。

2020年には東京オリンピックもある。パラリンピックも当然開催される。

なのに現状は高齢者や障害者を世界から迎え入れる状態にはほど遠いように感じる。

できることをやっていき、改善していくしかないだろう。

コメント

  1. OKAMURA より:

    貴重な体験ですね。僕も想像しかしていないので実のところはわかっていないし、意識しておかないと想像力が希薄になっていってしまいます。

    ずっと扱いやすいと思いますが、結構ベビーカーも共通するところがあるのに気付きました。街と人のアクセシビリティは少子化緩和にも貢献するかもしれませんね。

  2. mojo より:

    △OKAMURAさん
    そういえば車椅子で通るルートには必ずベビーカーを押すママさんたちがいました。

    彼女たちもまた遠回りして少ないルートを選んで移動していたのですね。

  3. kohatchan より:

    なんとか車椅子ではありませんが、東京ではハンデキャップがあると難しいですね。皆さんの動きが速くてほとんどケアを期待するのは無理と思いました。
    飛行機の方がサポートが効いていると感じますが新幹線はダメですね。

  4. mojo より:

    △kohatchanさん
    そうですね。僕も病気をしてから通常の人よりも歩く速度が遅くなってしまったため、特に混雑時に駅の階段を登るときなど、後ろからの圧力に困ってしまうことがあります。手術直後はなおさらでした。

    飛行機は最近乗る機会が減ってしまったためわかりませんが、新幹線よりマシなのですね。会社の意識が違うのかしら。

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