「文藝別冊 ちばてつや 漫画家生活55周年記念号」という本が出ているのをTwitter経由で知ったので、さっそく買ってきた。
ちばてつやは好きなマンガ家のひとりである。mojoの世代というのは手塚治虫も読んではいるけれど、彼が次々と新しいスタイルを構築していった姿を見た直撃世代ではない。どちらかというとアニメや実写版ドラマ(マグマ大使とかね)のほうを先に体験している人のほうが多いのではないか。
もちろんその後、後追いで旧作を読んだり、同時進行の作品もいっぱい読んだけど、ど真ん中の世代というと、やはりmojoたちよりももう少し上の人たちなんだと思う。
その手塚治虫に影響を受けたトキワ荘グループ、藤子不二雄や寺田ヒロオ、赤塚不二夫、石森章太郎(今は石ノ森なのか)あたりが、子供の頃にむさぼり読んだマンガ家たちである。
で、今回本を手にした、ちばてつやは、彼らとはまた違う位置にいた。イメージとしては手塚治虫と同等とまではいかないものの、ほぼ肩を並べている。そんな風に思っていた。あくまでもイメージの話ね。
個人的な好みかも知れないけれど、手塚治虫は作品によって「うーん……」と思うようなものがあったのに対し、ちばてつやの場合は、ある一定以上の普遍性があり面白さのレベルを保っていたような気がする。
そう、とても安定感のあるマンガ家だと思っていた。
でも、年齢を見るとかなり若いのだ。世代的には石森章太郎(こちらが1つ上だと思う)と同世代。藤子不二雄が5〜6歳上で赤塚不二夫も4つぐらい上か。
それを考えると、ちばてつやはやっぱり若い頃から安定感があったんだなと思う。
肝心の本のことを書くのを忘れてた。メインはちばてつや本人へのロングインタビューなんだけど、そのなかで若くして亡くなった弟ちばあきおのことにも触れている。
ちばあきおは、本当に好きなマンガ家だ。ひょっとしたらお兄さんのちばてつやよりも好きかも知れない。mojoのなかでは赤塚不二夫と双璧をはる。
このインタビューのなかで、その弟あきおが亡くなったあと、「実はそのとき、あの作品の続きを描こうと思っていたんですよ。私が」と語っている。あの作品とは遺作となった「チャンプ」というボクシングマンガだ。
ジョーとは違い、平凡で気が弱くて目立たない少年が、ボクシングを覚えて次第に強くなっていく。そんなマンガだった。今でも大判の特集号を持っている。
結局、チャンプを読んでみて「ああ、これはオレには手は出せないな」と思ってやめたと書かれているが、もし描いていたら…という夢と、確かに言ってることはわかるよなという思いが、いちファンにもあるくらいだから、どちらが正しいなんて言えないよな。
ところでこの本にはたくさんのマンガ家が寄稿している。藤子不二雄A、さいとう・たかおといった重鎮を筆頭に、萩尾望都やあだち充、江口寿史に高橋留美子、さらに大友克洋や福本伸行までそうそうたるメンバーだ。
みんながそれぞれの「ちばてつや」を文章やマンガ、イラスト、版画などいろいろな形で表現している。
それらに目を通していて思うのは、どれも愛に満ちているということだ。やさしくて愛があって、「みんなが好きなんだなぁ」ということが伝わってくる。そんな本だ。
●ちばてつや公式サイト
●ちばてつやのブログ『ぐずてつ日記』
●ちばてつや – Wikipedia
●トキワ荘関連書籍(Amazon)
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